十二兼〜三留野宿〜妻籠宿〜馬籠宿
(2002.3.2)

◆ 三留野宿まで,木曽川を眺めて歩く ◆

 冬の間「挫怠菌」に体と脳を侵され,暖房の利いた部屋でテレビを観るという休日を送っていたが,このところの陽気に誘われて,久しぶりに中山道を歩きに出た.

 3月2日.大垣発午前5時33分発の電車で名古屋へ向かう.名古屋の手前で朝日が昇ってきて東の空が明るくなってきた.名古屋からは6時18分発の中津川行き快速に乗る予定であったが,駅に着くとホームに6時15分発の臨時快速「きそスキーチャオ」藪原行きが停まっていた.中央線の快速は多治見から中津川までは各駅停車になるが,この臨時快速は,この区間も特急なみの停車駅で走る.中津川からは先は同じ列車になるが,できれは中津川で駅から出てコンビニで買い物をしたいと思っていたので,中津川での乗り換え時間を稼ぐためにこの列車で木曽路に向かうことにした.

 311系4両編成の電車は金山,千種,大曽根,高蔵寺と停車し,岐阜県に入った.多治見を過ぎた頃から霧が出てきて,一時は景色が全く見えなくなるほど濃くなった.中津川に着く頃には霧も晴れて,コンビニを探しに駅の外へ出た.しかし視界の中にはコンビニの看板は見えず,土曜日の早朝のせいもあって,人影も少なくて寂し気な駅前であった.後で分かった事であるが,駅から真直ぐにのびる道(緩やかな上り坂になっている)を少し(バスで一区)行くと,スーパーのアピタがあり,その前にコンビニがある.

 コンビニをあきらめて駅に戻り,7時41分発の松本行きの普通電車に乗る.2両編成のワンマンカーであるが,車内は通学の高校生で活気があった.坂下駅と南木曽駅で高校生が降りてしまうと,静かになり,ドアの開閉の時に鳴る電子音が車内に響く.南木曽で特急に追い抜かれ,8時18分に十二兼駅に着いた.

 

JR中央本線十二兼駅
日陰にはまだ雪が残る

木曽川(十二兼〜三留野間) 三留野宿へ向かう道(国道から別れる)

 ログハウス風の十二兼の駅舎から出ると,日陰にはまだ雪が残っていた.手袋をはめて,8時25分,三留野宿に向かって歩き始める.左手に国道19号線が迫り,国道の上の温度表示が4℃を示していた.中山道が国道と合流する手前に中川原の明治天皇御休所跡がある[8:37].ここからしばらくは国道を歩くことになる.歩道があるので危険を感じることはないが,車の排気ガスを吸いながらの道中となる.右手には木曽川の流れが見える.特にこのあたりの木曽川は「羅天の桟道」と呼ばれて,断崖が垂直に落ち込んでいるところであり,眺めは良い.約30分,国道を歩き,国道19号線の104.2km地点で,国道から分かれて斜め左に入る[上の写真参照,9:08].鋪装された道であるが,車はほとんど通らず,国道から一段高いところを気持ちよく歩くことができる.

 三留野宿の手前でJR中央本線のガードをくぐる.すぐに三叉路があり,ここが与川道との追分である[9:17].ここから与川経由で野尻まで14.7km,4時間25分との案内がある.与川道は「羅天の桟道」と呼ばれた木曽川沿いの道を避けて,根の上峠を越えて野尻宿へ至る中山道のバイパスである.自然が濃い石仏の道としても知られていて,歴史の道として整備されているようであるので,いずれ歩いてみたいと思っている.
 三留野宿の家々には「かぎや」などの昔の屋号を書いた看板が掛かっており,それが本来の表札より大きい.「ひとり歩きの中山道を」を見てくれた人から,本山宿ではいまでもお互いを屋号で呼び合っているというメールをもらったことがあるが,三留野でも同じことが行われているかも知れない.
 宿場を過ぎると蛇抜橋という木橋を渡る[9:44].「蛇抜け」とは,大雨の時に起こる山津波のことである.蛇抜橋を渡るとすぐに園原先生碑.このあたりで歩き始めて1時間以上たったので,休憩のため一旦中山道をはずれて,JRの跨線橋を渡ってJR南木曽駅へ向かった.

与川道との追分
右へ登る道が与川道,手前;三留野宿

三留野宿の町並み 蛇抜橋(留野宿)

 

 暖房の効いた駅舎の中で10分ほど休んだのち,再び跨線橋を渡って中山道へ戻る[10:05].JRのトンネルの上を過ぎると,D51型蒸気機関車が目に入って来る.雨ざらしで,かなり痛んでいる.このあたりから道は山あいに入って行き,しだいに上りがきつくなり体が熱くなってくる.途中で四叉路があるが,案内板があるので,迷うことはないだろう(南木曽〜妻籠〜馬籠は,「歴史の道」やJR東海の「さわやかウォーキング」のコースとして整備されている).坂を登り切ると神戸集落である.民家の庭に間違って入ってしまったのではないかと思うような,手入れされた庭木の間を通る.ふりそでの松を見て,道を下ると五叉路に出る.交差点脇にウォーキング向けの道標が立っているので,それに従って行く.

 道がカーブし,やがて竹林の中に石畳の道が現れる.道はやや上りになっており,登り切ると江戸から78里目の上久保の一里塚がある[10:38].左右両塚とも残っているが,塚に植えられている木が,塚のまん中から生えていない.一里塚を過ぎると民家があり,道は下って行く.この道は石畳の上にアスファルトが敷いてあり,自動車を通すためと言え,ちょっと残念な気がする.
 道は大きくカーブして再び山あいに入って行く.途中で道が二つに別れる[10:50]が,右側の砂利道を進む.ここにも案内用の道標があるので,それに従う.この先で妻籠古城への道が別れている.時間はともかく,体力が許さなかったので,城跡へは寄らずに妻籠へ向かった.

庭のような道 石畳(三留野〜妻籠間) 上久保の一里塚

◆ 妻籠宿 ◆

 

 11時06分.妻籠宿の入り口の高札場に着く.掛けられている高札は,どれも真新しく,最近作り直されたもののようであった.高札の文字も現代人にも分かるように,書き直されているようであったが,それでも文語調の言葉は,なかなか理解できない.
 ちょっと早いが,昼時の込み合う前に妻籠宿で昼食をとることにした.高札場に近い店で,山菜丼800円也を食した.ご飯の上にたっぷり山菜がのっており,素朴で健康的な食べ物である.メニューには「とろろ丼」というのもあって,これも捨てがたかったが…,今回はあきらめることにした.
 食事の後は,宿内をゆっくり見物する.まずは脇本陣奥谷と歴史資料館である.入り口で妻籠宿本陣との共通券(700円)を買う.脇本陣奥谷は妻籠宿にあった2軒の脇本陣の内の一つで,現在の建物は明治10年に建てられたものである.中に入ると囲炉裏の火が赤々と燃えていた.囲炉裏の煙が天井へ昇り,家全体が暖まる仕組みになっている.ここでは係りの人が付いて,説明をしてくれる.明治天皇が休まれた際に使用されたテーブルなどが展示されている.裏手は歴史資料館になっていて,資料館を一巡すると,街道沿いの出口へ出てくる.
 妻籠宿は約6年前にも一度来ているが,少し観光地化が進んでいるような気がしないでもなかった.でも,食べ物屋の店構えなどの細かいところに,できる限り往時の雰囲気を保っていこうという姿勢が感じられる.そのあたりが,観光地化が進んだ馬籠と対照的である.枡形のあたりは,道が鋪装されておらず,往時の街道の面影が色濃く残る.
 宿場を西に歩き,宿場のはずれに近付くにつれて,だんだん粗末な造りの家が多くなってくる.このあたりは木賃宿が多かったのではないかと思う.

妻籠宿 道標(妻籠〜馬籠) 行く手には雪が(妻籠〜馬籠)

◆ 馬籠峠越え ◆

 妻籠宿をすぎて,町営第3駐車場の脇の道を馬籠へ向かう.約6年前に馬籠峠越をした時は,馬籠から妻籠へ向かったが,一般的にはこの方向が楽に歩けると言われている.今回は逆コースを行く.
 しばらく歩くと,大妻籠である.ここは立派な造りの民宿が街道の両側に並ぶ.
 さらに進むと,石畳の道が現れたりして,昔の旅の雰囲気を味わいながら歩くことができる.途中で男滝女滝を経由する道が分かれているので,滝の方へと降りて行く.まだ雪が残る道を,足元を気にしながら,滝まで行った[13:06].説明がなければ,どちらが男滝かわからない.夏場なら涼感を感じるところであろうが,まだ春浅い今の季節は,まだまだ寒々としている.滝を後にして急な階段を登り,一旦,車道へ出る.しばらく新道を歩いて旧道と合流する.
 妻籠と馬籠のほぼ中間点に一石栃白木改番所がある[13:31].ここには立場茶屋があったが,今は営業していない.茶屋の前で,しばし休憩する.尚,ここにはトイレもある.
 いよいよ馬籠峠への急な上りに差し掛かる.白木の番所までも上り坂が多いが,ここから峠までが,最も急な上りである.約15分で馬籠峠801mへ着いた[13:49].
 峠からは多少の上りはあるが,全般的には道は下りである.6年前の印象では.峠から馬籠宿まではもっと近いはずであった.記憶とは当てにならないものである.途中に十辺舎一九の碑があった[13:59].書かれている内容は分からなかったが,一九が使っていた熊手型の判は読み取ることができた.軽快に歩き14時21分,馬籠宿の東の入り口,陣場のバス停に着いた.馬籠峠越は,今回私が歩いたのと反対の方向に歩くのが,上りの距離が短く,一般的に楽と言われているが,すれ違ったのはわずか5人だけで,まだまだ歩いている人は少ないようであった.

◆ 旅の締めは温泉 ◆

 馬籠は,以前来た時は観光地化し過ぎている気がして,あまり好きになれなかったが,わずか数年歴史を重ねただけで,建物も風格を増し,石畳の道に懐かしさを感じるようになっていた.これから歳月を経るに従って,ますます「いい街」になって行くだろう.宿内は多くの観光客で賑わい,御幣餅などを手にしながら歩く若いカップルが多かった.若者にとって妻籠や馬籠は,テーマパークの一つにすぎないのかも知れない.

 馬籠の宿場の出口に駐車場や路線バスの停留所がある.ここから濃飛バスの中津川行きに乗り,クアリゾート湯舟沢へ向かう.入場料は1000円であるが,クアリゾート湯舟沢のホームページにある割引券を印刷して持って行けば,900円で入ることができる.ここはのお湯は重曹泉といわれる天然温泉で,ぬるぬるした感じがする.大浴場の壁には中山道の浮世絵が複製されており,街道を歩いた後のひとっ風呂には最適かもしれない.もちろん露天風呂もある.入浴の後は食事や休憩もでき,ホテルも隣接しているので,ここで一泊して,翌日,更に先を歩くという計画も可能である.
 クアリゾート湯舟沢で一時間余り休んで,再びバスに乗り中津川駅に戻り,16時32分発の名古屋行き快速に,間一髪飛び乗った.

一石栃白木改番所 馬籠宿 クアリゾート湯舟沢

所要時間 約7時間半


スーパー,コンビニ情報

十二兼:国道19号線の119.5km地点(大桑村上郷)にコンビニのタイムリー
三留野:JR南木曽駅前に食堂や喫茶店がある.また,観光客相手の売店も駅前にある.
妻籠:宿内に食事処は多い.コンビニは(当然)見当たらず.
馬籠:宿内に食事処は多い.コンビニは(当然)見当たらず.馬籠のバス停近くの駐車場にある売店でいろいろなものが揃うのではないかと思う.

交通情報

十二兼:JR中央本線十二兼駅.駅の前が中山道
三留野:JR中央本線南木曽駅.駅を出てSL広場の方へ向かう.妻籠方面へはSLの先の突き当たりを右に行く.三留野宿へは,SL広場の手前のJRの線路を跨ぐ歩道橋を渡り,JRの木曽福島方向へ歩く.
妻籠:JR中央本線南木曽駅.駅前からおんたけ交通バス.
馬籠:JR中央本線中津川駅から,濃飛バスの馬篭行きで終点.


2002年 12月 8日 (日)作成

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