草津宿〜石山
(2002.4.7)

中山道草津〜石山吉野山花見紀行

 例年この時期に友人と京阪方面で花見をしているが,今年は暖冬の影響で,平野部ではすっかり葉桜になってしまっている.仕方が無いので,桜を求めて吉野まで足をのばすことにした.そのついでに,中山道の草津宿から,石山寺で有名な大津市の石山までを歩いた.草津には本陣や道標が往時の姿のまま残されており,吉野には古き良き街道の情緒が残っていた.今回の「ひとり歩きの中山道」は中山道&吉野の千本桜編である.

◆ 東海道との追分,草津 ◆

 4月7日午前6時.外は雨,天気予報では昼頃から天気は回復すると言っていたので,家を出て駅に向かった.大垣6時31分発で米原へ向かい,米原で新快速に乗り換えて,7時40分に草津駅に着いた.

 駅を出ると雨は傘をささずに歩ける程度の小降りになっていた.駅前には4月28日・29日の両日に行われる「草津宿場まつり」の幟が風になびく.駅前からまっ直ぐにのびる道を100mほど行くとアーケードのある通りに出る.この道が中山道である.
 日曜日の朝8時,まだ商店街は人影が少なく静かだ.西へ向かって歩くと草津川の下をくぐるトンネルに出る.草津川は天井川で,中山道の他,国道1号線,JR東海道本線もトンネルで川の下をくぐる.私の歩くトンネルの壁面には旧街道をイメージしたイラストが描かれており,ここが中山道であったことが分かる.(尚,昔はトンネルではなく,川を渡った)
 トンネルの出口には(京から江戸に向かって)「右 東海道いせみち,左 中仙道美のぢ」の道標(文化13年建立)があり,ここが東海道との追分である.ここから東海道へ入れば,水口を経て鈴鹿峠,四日市,その先は伊勢街道へと続く.道標の向いには高札場があり,すぐに草津宿の本陣である.現在は資料館として公開されているが,開館までにまだ1時間ほどあった.その先には草津市観光物産館「脇本陣」,さらに草津宿街道交流館…と見どころは多いが,いずれも開館時間前であった.今日は道中を急ぐので,そのまま通り過ぎたが,いつか途中下車して訪れてみようと思う.
 アーケードが途切れる手前に,「道灌」の大きな看板を掲げる建物がある.創業明治7年の太田酒造で,日本酒だけでなくワインやブランデーも造っている.太田家は江戸初期に越前福井藩から草津に移り、代々関守をつとめていた家柄である.そして立木神社の手前に野村屋旅館という,由緒ありそうな建物の旅館があった.このあたりまでが草津宿である.[8:15]

 

東海道との追分に建つ道標
草津宿本陣 立木神社の手前にある旅館野村屋

◆ 急がば回れ瀬田の唐橋 ◆

 矢倉に「右やばせ道 ここより廿五丁大津へ船わたし」と彫った道標が建つ[8:25].やばせ道とはここから矢橋港に至る道で,矢橋港から大津へ渡し船が出ていた.矢橋は東海道名所図会や伊勢参宮名所図会に描かれ,「矢橋の帰帆」として近江八景にも数えられるほどで,船からの景色はすばらしいものであった.しかし,一旦比叡おろしの強風にあえば,舟が遭難することもあり,遠回りではあるが,唐橋経由の陸路を行く人も多く「急がば回れ瀬田の唐橋」のことわざになっている.現在は沖合いに矢橋帰帆島という人工島が造られ,下水処理場や水環境科学館,キャンプ場などが整備されている.かつてこの道標が建つ角には,草津名物の「うばが餅」屋があったが,今は国道沿いに移転している.
 南草津駅近くで国道を渡り(セブンイレブンがある),野路の玉川跡[8:45]を過ぎ,狼川町会館でトイレを拝借.東海道立場跡[9:08],金魚鉢の形をした家[9:35]の前を通り大江町へ入る.意外に細かいアップダウンがある.道はこの先で2回直角に方向を変えるが,交差点には案内板があるので,それに従って行けば良い.建部神社をすぎるといよいよ瀬田の唐橋である.

 雨がぽつぽつと落ちてきた.さほど強い降りではないので,傘をささずに行く.唐橋の手前に「瀬田しじみ」という和菓子を売る角安本舗がある.瀬田の唐橋は長短二本の橋から成り,途中の島には料理旅館などが並ぶ.橋の上からは湖上で漕艇の練習をする姿が見えた.[9:50]
 橋を渡って左に折れると,紫式部が源氏物語を執筆した場所と伝えられる石山寺があるが,今日はこのまま進む.京阪石山坂本線の踏切を渡って最初の交差点を右に折れる.雨が少し強くなってきたが,もう少しで石山駅なので,そのまま急ぎ足で歩く.国道1号線のガードをくぐって,10時ちょうどにJR石山駅に着いた.

矢橋道との分岐に建つ道標
すっかり葉桜になった桜並木 瀬田の唐橋のたもとに建つ常夜灯


 ◆ 吉野で昔の街道情緒に浸る ◆

 例年なら,このあと京都か大阪あたりで花見となるのであるが,今年は桜の開花が早く,平野部ではすっかり葉桜になってしまっている.「葉桜の下で黄桜を一杯…」と駄洒落を言ってもはじまらないので,薬が切れた中毒患者のように,桜を求めて吉野まで行くことにした.友人との待ち合わせは近鉄吉野駅13時である.

 石山駅10時03分発の新快速に乗り,京都からは近鉄京都線,橿原線,吉野線と乗り継ぎ,12時52分に吉野駅に着いた.吉野駅は,南海高野線の極楽橋駅もそうであるが,よくもまあ,こんなところまで線路をひっぱって来た!と感心してしまうほどのところで,やっぱり吉野は遠い!というのが実感である.
 駅を出ると,駅前には「山桜ようかん」や柿の葉寿司などを売る店が並び,これからの桜見物に期待感を抱かせてくれている.
 一本後の電車で着いた友人と,バスで中千本まで登った(350円).吉野の桜は,麓から下千本,中千本,上千本,奥千本と言い,4月中は山のどこかで桜を見ることができる.ちょうど今頃は中千本から上千本あたりが見ごろである.バスを降りて,柿の葉寿司で軽く一杯やってから,上千本の方へ向かって歩き始めた.かなり急な上り坂であるが,多くの人が歩いている.途中で葛きりを食べさせる店があったりして,昔の街道はこんな雰囲気であったのではないかと思った.
 吉野山の桜は山桜で,平野部にある染井吉野とは趣が異なる.桜の集中度は大阪城公園や中ノ島公園の方が遥かに高いが,ここ吉野は,ハイキングを楽しみながら,遠くの桜を観賞するという,大変健康的な花見である.○○株式会社△△課御一行様の酒乱型の花見というものは見あたらない.ただ,狭い道を自家用車が通るのは何とかしてほしいと思う.歩きながら,広告代理店に勤め友人から「ポスターなどに使われている吉野の写真は,大体このあたりから撮っている」とか,水分神社の由来などの説明が入る.
 吉野水分神社(ここの境内には見事な枝垂れ桜がある)で引き返して,来た道を中千本まで降りてきた.ここからロープウェイ乗り場までは歩行者天国になっており,道の両側に土産物店がびっしり並んでいる.ごくありきたりの観光地って感じである.葛きり,柿の葉寿司,草餅,桜餅を扱う店が多い.藤井利三郎薬房という店は漢方薬陀羅尼助丸を200年間商っており,歴史を感じさせる店構えであったが,店先に立っているのが現代風の若い女性であったのは,ちょっと似合わないと思った.
 最後に金峯山寺の本堂,別名蔵王堂に参ってロープウェイで吉野駅まで降りてきた.近鉄の西大寺駅前で一杯やって友人と分かれた.

近鉄吉野駅前 吉野の千本桜 吉野水分神社の枝垂れ桜


■所要時間 草津〜石山まで約2時間(但し,かなり早足で歩いている)


スーパー,コンビニ情報

この区間は比較的都市部なので,コンビニ等はあまり不自由しないと思う.
草津駅前,南草津駅前,瀬田駅前,石山駅前にスーパー,ファーストフード,コンビニ等がある.

交通情報

草津:JR東海道本線草津駅(南口?,近鉄や平和堂のある側)を出て南へ行き,アーケードのある通りが中山道.
石山:JR東海道本線石山駅.


2002年 12月 8日 (日)作成

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