大井宿〜大湫宿
(2002.10.13)

◆ 期待通りの大井から大湫への道 ◆

 今回の中山道ひとり歩きは,かなり期待して旅立った.…というのは,前回(2002.9.14),大湫から御嵩までを歩いた時,往時の状態をそのまま残す石畳や一里塚の強い印象が残っていたからである.今回はその続き(正確には今回の続きが前回になるのだが,歩く順番が逆になってしまった)を歩くので,否応なしに期待が膨らんだ.

 名古屋から中央線の快速電車で8時38分に恵那駅に着く.駅を出てすぐ左手にTOWN PLAZA恵那(恵那市観光案内所)があるので,まずここでパンフレット等を仕入れる.中山道広重美術館や中山道ひし屋資料館の割引券なども置いてあるので,これらの施設を利用する場合も,利用の価値が大きい.

 駅前から真直ぐ延びる道を行き,100mほどで角に菊水堂という和菓子屋がある交差点に出る.この菊水堂の前の道が中山道である[8:55].
 右折して大湫方向へ進路をとると,右手にコンビニ(CoCoストア)がある.さらに中山道を250mほど進むと,左手に中野村庄屋の家と浸水防止壁がある.浸水防止壁とは川が氾濫して浸水するのを防ぐために,道の両側に石柱を立てて,板をはめて浸水を防止するものである.現代でも都会の地下道の入口などに似たものを見かける.すぐに中野橋を渡り[9:11],広い通りに出る.ここから道は少しづつ上り坂になって,やがて五叉路に出る.ここは,とりあえず歩道橋を渡り,階段ではなく,右の方へ降りて行くスロープを行く.5,6分で左側に「中山道上町観音堂」と書かれた真新しい道標があるので,この道が中山道であることが再確認できる.
 このあたりには西行(平安時代の僧で歌人でもあった)関係の遺跡が多い.すぐに,西行が,湧き出る泉を汲んで墨をすったと伝えられる「西行硯水」がある[9:26,トイレあり].JR中央線の踏切の手前には「西行塚 西三丁」と書かれた道標がある.あたりは西行公園という名のポケットパークとして整備されている[9:36].この踏切を渡ると,旧街道らしさがぐっと増してくる.水戸黄門の一行に出逢いそうな感じさえする道である.中央自動車道の高架をくぐると上り坂になり(この辺りが西行坂か?),すぐに西行塚へ登る階段がある.階段を登ると,西行塚とともに休憩施設がある.ここからの眺望がすばらしく,眼下を中央自動車道が走り,遠くには御岳山(木曽の山の名前は,御岳山くらいしか知らない)であろうか,木曽の山々が霞んで見える[9:45〜10:00].
 西行塚から降りて来ると駐車場と整備が行き届いたトイレがある.さらに石畳の道を登る.マウンテンバイクの少年が追越して行ったが,石畳の道は走りにくいようで難儀していた.坂を登り,視界が開けて来ると,左手に「西行の森」の芝生が広がり,その向こうに中央自動車道が見える.この辺りの標高は約380mで,恵那市の中心部より100mほど高い.街道沿いは桜の名所になっており,桜百選に選ばれている.そして程なく江戸から88番目の槙ヶ根一里塚である[10:06].

中野村庄屋の家 西行塚 槙ケ根一里塚

◆ 適度なアップダウンが続く 十三峠 ◆

 槙ヶ根の一里塚を過ぎると,しばらく尾根伝いの軽快なハイキングコースとなる.やがて十字路に出るが直進し,すぐに広い舗装された道と合流する.そのまま進むと右手に工場があり,向いの空き地にベンツが乗り捨てられていた.工場の前から,今来た舗装路の一段上を未舗装の道が続いているので,こちらを行くと槙ヶ根追分に出る[10:25].ここが高山(現 土岐市),池田(現 多治見市)を経て名古屋へ向かう下街道との分岐点である.辺りには「右 西京大坂 左 伊勢名古屋道」と書かれた1875年(明治8)建立の道標がある.更に立場茶屋や伊勢神宮遥拝所の遺構なども残る.私もお伊勢さんの方向を向いて手を合わせ,道中の安全と家族の健康を祈った.

 10分ほどで祝峠の姫御殿跡に着く[10:44].この辺りは眺望が良く,近くに松かさが多く着く松(子持ち松)があり,子持ち松越しに馬籠(孫目)宿が見えたため,縁起が良い場所と言われた.姫君の通行の際などには,ここに仮御殿を建てて休憩をすることが多く,1861年(文久元年)の和宮の通行の際にも,岩村藩の御用蔵から無節の柱などを運んで御殿を建てたと伝えられている.

 姫御殿跡を過ぎると,すぐに道の反対側に首なし地蔵がある[10:49].ここのお地蔵さんは,地元の人たちが道中の安全を祈って立てたものだが,ある日2人の中間がこの前で昼寝をしている内に,1人が首を斬られてしまった.あたりを見回しても犯人はみあたらず,怒った中間は「黙って見ているとはなにごとだ!」とお地蔵さんの首を切り落としてしまった.その後何人かの人が首をつけようとしたが,どうしてもつかなかったという言い伝えが残る.

 「中山道乱れ坂」の碑を見て,S字カーブを降りて行くと,乱れ橋を渡る.ここからは視界が開け,民家が点在し,棚田が広がる集落の中に入って行く.集落の中に岩村とを結ぶ大名街道との追分がある[11:15].
 集落を過ぎると「中山道兵六坂」の碑があり,また上り坂となる.大井宿から大湫宿までの中山道は小さな坂が連続するので,十三峠と名付けられている.10分ほどで紅坂の一里塚に着く[11:30].江戸から89番目の一里塚で,左右両塚とも現残する.

槙ケ根追分の道標 乱れ橋 紅坂一里塚

◆ うつむいて坂を登っていたら,
一里塚を通り過ぎてしまった ◆

 紅坂の一里塚を過ぎて坂を下る途中,石畳の中にぼたん岩という石が混ざっている.石の表面にちょうど葉牡丹の様に渦模様がついている.気付きはしたが,写真を撮るのを忘れてしまった.急坂を降りると,深萓立場跡である[11:50].高札場を見て,東海自然歩道の道標の「大久後」方面と書かれた方角を目指す.恵那市役所武並支所の前を斜めに入り,民家の庭先のきれいな花を見て歩く.少しづつ登りになり,棚田を見下ろすことができるようになる.今は刈り取りが終わっているが,田植えの後などは,さぞ美しいだろうと思った.12時を過ぎていたので,道端に腰を降ろして,恵那のコンビニで買ったおにぎりを食べて休憩をとった.

 道は2手に分かれ,左は石段を登る道,右は鋪装された平坦な(と思われる)道である.私は左の道を行ったが,坂を登り切ると,休憩所があった.どちらが正規の中山道か分からないが,どっちを行っても同じ所に出るようである.
 炭焼立場[12:51]を過ぎると.直線的に延びる薄暗い石段に出る[12:59].この石段を登った先に権現山の一里塚(江戸へ90里,京へ44里)があるが,石段がきつく,うつむき加減で歩いていたので一里塚に気付かずに通り越してしまった.急坂を登りきり,坂が緩やかになると,街道の両側にゴルフ場が広がり,道にロストボールが転がっていたり,カートが横切ったりする.順礼水の碑の前には,湯飲み茶わんと何故かゴルフボールが並んでいた[13:23].この後,権現山の一里塚を見落としたことを知って一旦戻るはめになる.

 中山道曽根松坂の碑には大田南畝の壬戊紀行の一節が添えられている[13:34].十三峠の三十三観音の脇には阿波座の茶屋跡があり,ベンチが置いてあった[13:35].
 尻冷やし地蔵[13:38]は,確かにどこからか水が流れているようであったが,お地蔵さんのお尻を冷やしているようには見えなかった.中山道しゃれこ坂(八町坂)[13:48]と尻冷やし地蔵の脇にある碑にも壬戊紀行の一節が添えられている.山之神坂[13:56].童子ヶ根[13:59]を過ぎると大湫の宿の家並が眼下に広がる.

 大湫宿に入ると正面に大湫小学校の木造校舎が見える.懐かしさを感じる構えの建物である.左折すると,右手に真新しい瑞浪市大湫コミュニティーセンターがあり,中山道に関する展示や出版物の販売も行っている[14:06].私も中山道関係の書物を購入したかったが,日曜日のためか職員の方が不在で,あきらめて帰ってきた.
 コミュニティーセンターでしばらく休憩し,宿内へ出た.宿場内には2階の壁が漆喰になった建物や,門までのアプローチが見事な旧脇本陣跡.天然記念物の,神明神社の樹齢1300年の大杉などがある.そして西のはずれの高札場まで歩いて来て,今回の中山道ひとり歩きを終えた[14:41].

 ここから中山道をはずれ,JR釜戸駅までの約4kmの坂道を降りて行く.前回登ってきた時は約1時間かかったが,今日は下りなので約40分で釜戸駅に着いた.

 

 今回歩いた区間は,いわば中山道十三峠そのものです.細かなアップダウンが続きますが,息が切れかかった頃に峠に着く感じで,歩いたのは10月半ばでしたが,汗ばむほどの事はありませんでした.往時のままの土道や石畳,一里塚,西行の遺跡などが残っており,お勧めのコースの一つです.大湫までの交通さえ確保できれば,適当な距離かもしれません.また,この先の細久手宿の老舗の大黒屋さんに泊まって,大井宿から御嵩宿まで1泊2日で歩き通すのも良いと思います(これが本来の中山道ウォークかも知れませんが).

樫の木坂
(この先に権現山の一里塚がある)
権現山一里塚 大湫宿内の建物


■所要時間 大井宿→大湫宿まで約6時間(尚,大湫から釜戸までは約40分,逆方向は約1時間)


スーパー,コンビニ情報

恵那駅前

駅前から真直ぐ延びる道を100mほど行き,角に菊水堂という和菓子屋さんがある交差点を右に曲る(この道が中山道).しばらく行くと広い通りに出るが,その通りにCoCoストアがある.

釜戸駅前

駅前のアーチのある道を行き,最初の角を右に曲るとCoCoストア.

交通情報

大井宿

JR中央本線恵那駅下車.
駅前から真直ぐ延びる道を100mほど行き,角に菊水堂という和菓子屋さんがある交差点で交わる道が中山道

大湫宿

JR中央本線釜戸駅からタクシー(7分,但し,駅に客待ちのタクシーがいるとは限りません).私は釜戸駅から歩きましたが,約1時間,急な上り坂が続きます.大湫宿から釜戸駅方向は下りになるので,歩いて約40分です.


2002年 12月 8日 (日)作成

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