石山〜三条
(2002.11.2)

 かなり前から「ひとり歩きの中山道」の仕上げは,京都三条大橋と決めていた.
 学生時代を京都で過ごし,京都という街に愛着を持つ私にとって,これが正当な中山道のゴールであると思っている.そして,いよいよ,その時が来た.

◆ 意外と見どころの多い大津 ◆

 11月2日午前9時前にJR東海道線の石山駅に着いた.空は曇っていたが雨が降りそうな感じではなかった.
 さあ,いよいよ「ひとり歩きの中山道」のファイナルステージのスタートである.駅を出て東に向かい,東海道線のガードをくぐって線路の反対側へ出る.晴嵐商店街と書かれたアーケードが見える.近江八景の一つに「粟津の晴嵐」があるが,このあたりだろうか?かっては道の両側に松並み木が続いていたらしいが,今はNECの工場の前に数本残っているだけである.昔は,この道が湖岸だったと思う様な緩やかなカーブを道なりに歩いていくと,屋根に鯱ほこが乗った古い家に突き当たる[9:12].道なりに左に折れ,京阪電鉄の踏切を渡って100mほどで右折する.再び京阪の踏切を渡る(京阪電鉄の瓦ケ浜駅)[9:24].このあたりには,連子格子の古い建物が残っているが,今日はゴミの収集日にあたっているようで,家の前にゴミが山積みされており,ちょっと残念であった.踏切から約250m,
突き当たりを左に折れ,さらに200mほどで右に折れる.このあたりは膳所城下で,城下町特有の曲がりくねった道筋が続く.この通りには,セブンイレブンやローソンがある.和田神社の先の三叉路は道なりに左へ進む[9:48].響忍寺でまた突き当たり,右に折れる[9:53].何回も右へ左へと曲がりながら進むが,この道は大津市の「逢(あ)のみち湖(こ)のみち山歩(さんぽ)みち」に指定されており,多くの場所に案内板が建っているので迷うことはないだろう.右手に西武大津ショッピングセンターが見えてきたので,立ち寄って休憩することにした[10:09].ここまでで,約1時間である.

 今年のプロ野球の日本シリーズでは西武ライオンズがジャイアンツに4連敗したが,その応援感謝セールをやっていた.隣の大津PARCOにも寄って,ウインドショッピングなどで約1時間を費やしてしまった.
 さて,元の道(中山道・東海道)に戻って大津宿へ向かう[10:57].すぐ義仲寺というお寺がある.ここには木曽義仲の墓や松尾芭蕉の墓があるが,拝観料を取るのと,ついさっき1時間も休憩を取ってしまったのでパスすることにした.三たび京阪線の踏切を越すと,緩やかな登りになり,古い建物が目につくようになる.11時14分,県庁前交差点.「すだれ老舗」という看板を提げた森野すだれ店は,珍しい“すだれ屋さん”である.その隣の大津魚忠の建物は文化庁の登録有形文化財.向いの藤村商店の「御饅頭處」と右から左へ書かれた看板も味わい深い.少し行くと道の左に「此附近露國皇太子遭難之地」の碑がある.いわゆる大津事件(1891年)の現場である.その向いには,2階の窓が円弧状の出窓になり,格子のはまったオシャレな古い建物がある…など,大津は意外と見どころが多い.そうこうする内に札の辻の交差点に出た[11:28].中山道(東海道)はここを左に曲るが,一旦右へ曲って浜大津の方へ向かった.途中のコンビニでおにぎりを買って,大津港に停泊するミシガン(琵琶湖の遊覧船)が見える場所で食べることにした.

石山から膳所にかけての街道沿いの建物

義仲寺 手前が森野すだれ店,その奥が大津魚忠

◆ いよいよ京都へ ◆

 おにぎりを頬張っていると,ぽつりぽつりと雨が落ちてきた.暫くすると本降りになってきたので,あわてて屋根のある場所へ移った.三条大橋で午後4時すぎに友人と合流する約束をしているので,あまり長くは雨宿りできない.仕方なく傘を取り出して山科方面へ歩き出した.
 札の辻の交差点を12時10分に通過.道路のまん中を京阪京津線の4両編成の電車が通っていく.道は上り坂になっている.見た目以上に急な勾配である.しばらくすると雨は小降りになったので,傘を仕舞った.左から迫ってくる国道1号線と合流する手前,右側に旧逢坂山ずい道(鉄道遺跡)がある[12:28].かつて東海道線はここを通っていた.今は京都大学防災研究所の観測施設として利用されている.道は両側から山が迫り,その間の狭い空間を国道1号線と京阪京津線が通り,頭上には名神高速道路の橋が架かっている.このあたりの国道1号線には左側だけにしか歩道が無い.蝉丸神社などの見どころは,右側の方にあるが,交通量も多く,ここは安全第一で歩道を歩くことにした.
 少し行くと,国道1号線から右に別れる細い道があり,中山道(東海道)はここを行くが,国道を渡る場所が無い.止むなく,車の切れ目を待って国道を横断して,国道から別れた.このあたりまで来ると,狭い谷間に陽が射してくるまでに天気が回復してきた.道の両脇に「日本一のうなぎ」の看板を掲げる老舗の「かねよ」がある.鰻を焼く香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる.京阪の大谷駅あたりで,また元の国道1号線に戻るが,ここは歩道橋があるので,歩道橋を渡ろう.相変わらず山あいの狭い空間を歩いていく.国道は一番左,まん中に京阪京津線,一番右に名神高速道路が通っている.

 山が切れて,国道が名神高速道路の高架をくぐると,交番がある[13:10].中山道(東海道)はこの交番の前の道へ入って行く.ここからは国道から離れ,静かな住宅地の中を歩いて行く.400mほどで伏見道との追分に出る.ここには昭和29年に建てられた道標がある[13:16].中山道は右(直進)の道を行く.このあたりで大津市から京都市山科区に入る.500mほどで国道に出るが,ここは歩道橋で反対側に渡る.
 歩道橋を降りて,まっすぐ進み商店街の中に入って行くと右手に小関越の道標がある[13:22].小関越とは,ここから,ほぼ琵琶湖疎水に沿って大津の札の辻,あるいは三井寺に至る道である.旧三条四の宮交差点の西にヤマザキデイリーストアがある.その先,山科六地蔵前の交差点には,元禄16年に建てられた「伏見六ぢざう」と書かれた道標がある.そして山科駅前交差点に出る.駅前の景観は地下鉄東西線の開通とともに一変した.駅前の大丸百貨店でひと休みすることにした[13:40].

逢坂山関跡の碑と常夜塔

伏見道との追分に建つ道標 伏見六地蔵と書かれた道標
(元禄16年の建立)

◆ 友人の祝福を受け,照れながら三条大橋ゴールイン ◆

 三条大橋で出迎えてくれる友人に,携帯でメールを送ったりしていたので,約30分も休んでしまった[14:10].
 いよいよ,ひとり歩きの中山道もクライマックスを迎え,日ノ岡と蹴上の間の峠を越える.
 中山道(東海道は)三条通にぶつかり,横断歩道で反対側に渡ってからJR東海道本線の高架をくぐる.左側に整備中の公園があるが,ここはかつて京阪京津線が通っていた場所である.現在は地下化されたため,公園として整備する事業が始まっている.最初の狭い道を左に入る(理髪店がある角,とても狭い路地なので,見過ごさないようにしよう).道なりに進むと,やがて目の前に山が迫ってきて,上り坂になる.坂を上がって行くと亀水という泉があるので,この道が旧道であることが(ガイドブック等で)確認できる[14:36].狭い道であるが,三条通の裏道になっているのかタクシーなどが頻繁に通り,その度に道を空ける.道の両側には,お地蔵様がいくつもある.やがて道は三条通と合流する[14:45].

 数年前まで,このあたりは京阪京津線と三条通が並行して通っていたが,現在は京阪が地下化されたので,その空いた部分を使って道路の拡幅工事が行われていた.現在は工事中で,車は渋滞していたが,工事が終われば,この渋滞も解消されるだろう.道路の拡幅に伴って歩道も広くなっており,歩きやすい道になっている.地下鉄の蹴上駅前を14時58分に通過.ここから三条大橋までは,もう上り坂は無い.蹴上浄水場を左に見ながら,緩やかに下って行く.蹴上浄水場はツツジが有名で,私が京都に住んでいた20年ほど前は,ツツジのシーズンには場内を一般解放していた.
 右にはインクラインの坂道を散歩する人の姿が見える.私も軌道の上に登ってみた[15:06].道を隔てて,赤煉瓦の蹴上発電所がある.ここでできた電気でインクラインや京都の市電が動き,今日(こんにち)の京都の基礎を築いた…と思うと,感慨深いものがある.

 蹴上発電所の向いのウェスティン都ホテル京都の前から,三条大橋で合流する友人に「あと30分くらいで三条大橋に着く」と電話したところ,「午後4時集合になっているので,もう少しゆっくりしてくるように」との指令が飛んできた.やむなく,三条通から逸れて,知恩院に向かった.知恩院では法然上人八百年大遠忌が行われており,山門の特別公開なども行われ,多くの参拝者で賑わっていた.わたしも,ここまでの道中の安全を感謝し,残りの道中の安全と家族の健康を祈願した.また,門前の華頂短期大学では学園祭の真っ最中で,京都のもう一つの顔,学生の街の姿も垣間見ることができた.

 さて,知恩院に寄ったことでちょうど良い時間になったので,いよいよ三条大橋に向かうことにした.
 まず,東山通り(東大路)に出て,三条通に向かい,東山三条の交差点を左折した[16:07].三条大橋まではあと僅かである.あと少しで,ひとり歩きの中山道の全行程が終わってしまう….という思いはしなかったが,一歩一歩ゴールが近づいてくる.三条大橋の手前で信号待ちをしたら,学生時代の友人4人の顔が見えた.中山道69次を歩いて,一番嬉しい瞬間であった[16:14].
 友人達の拍手に,ちょっと照れながら,三条大橋の東詰めに着き,最後に全員で三条大橋を渡った.橋のたもとで記念撮影をし,三条大橋の近くの店で祝杯をあげた.

 三条大橋で出迎えてくれた坪田君,中村君,福村君,森川さん,ありがとうございました.そして,三条大橋集合!の音頭を取ってくれた福村君,本当にありがとうございました.

初秋の京.紅葉はもう少し先
(知恩院)
何となく京都な町並み
(三条通り)
三条大橋にて


■所要時間 石山〜三条まで約7時間(但し,途中で1時間ほど休憩し,さらに道草をしている)


スーパー,コンビニ情報

この区間は比較的都市部なので,コンビニ等にはあまり不自由しないと思が,石山駅前,西武大津SC近辺,浜大津,山科駅前,三条大橋から蹴上にかけての区間,にコンビニ等が比較的多い.

交通情報

石山:JR東海道本線石山駅.駅から東へ向かって,JRの下をガードで通る道が中山道(東海道)
大津宿:JR東海道本線大津駅下車.駅前から琵琶湖方面へ延びる広い道が,400mほど先で交差する道が中山道(東海道)
三条大橋:京阪電車三条下車.または京都市営地下鉄三条京阪下車


2002年 12月 8日 (日)作成

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